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先生は何度か深呼吸をして、私の顔をみた。
名簿をみていた時の不安そうな表情はもう消えていて…教室に入ってきた時のツンとした顔に戻っていた。
「1つ聞きたいんだが。その人の描く漫画のいいところは何なんだ?」
「え?いいところ?」
「目指すようになったキッカケ…っていうのかな。」
詩先生の描く漫画のいいところ…?そんなの、言い始めたらキリがないよ。
世界観も絵もストーリーも、全てが好きなんだから。
「詩先生の漫画は」
私は時間が経つのを忘れて、漫画のいいところを永遠と話してしまった。
周りは話に飽きてきたのか、うなだれていたけど…先生はずっと私の顔だけを見て、話を聞いてくれて。
時折、笑顔もみせてくれた。
幼い頃から思ってたんだ。
いつか、馨様のような王子様が目の前に現れるんじゃないかって。
漫画の中の人ではなく、実在する人物なんじゃないかって。
周りは『居るわけがない。いつまでも夢を見ずに現実を見ろ。』って言ってたし
私自身も諦めかけていた。
けど…
小学生の時からずっと探していた憧れの馨様、ううん。馨様に似た人が目の前に現れた。
私はそれだけでも、幸福感を得ていた。
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