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「………なぁ、鏡。」
「は、はい。」
やばい。
相手は馨様じゃないのに。
ドキドキしちゃうよ。
名前を呼ばれただけなのに、顔に目を奪われ…声が頭の中をこだまする…
ドキドキの音が聞こえるんじゃないか、と不安に思いながら俯くと先生は
「瑠衣。時々、君は必死に手を伸ばしても、僕の届かないところにいるように感じてしまうんだ。君の気持ちが分からなくなってしまうんだよ…」
と言った。
これって…
馨様の台詞じゃ…?
「せん、せ?」
「この瞳。この唇。この首筋。この腕。全て僕の物にしたいのに。」
先生はゆっくりと立ち上がり、馨様のように私の顔や体に触れる。
私は沙耶の台詞を思い出しながら
「か、馨…私にとっても、貴方は手の届かない存在なのよ?触れたくて、触れたくて仕方がないの…」
と、先生の頬に手を添えて、囁くような声で言った。
胸が張り裂けそう。
こんなにドキドキしたのは…初めて馨様を見た時以来だ。
あぁ。この時間がずっと…ずっと続けばいいのに。
そんなことを考えながら、もう片方の手を伸ばした瞬間。
先生は私の気持ちを感じ取ったのか、パッと手を離して微笑んだ。
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