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「台詞、覚えてるんだな。授業を潰すほど話せるんだから、覚えててもらわないと困るけど。」
先生は鼻で笑い、背中を向けた。
やだ。
どうして止めるの?
止めないで、先生。
こっちを向いて、馨様みたいに私のこと抱きしめてよ…
彼が馨様じゃないってことも、詩先生とは関係ないってことも、ちゃんと分かってる。
分かってるけど…頭が理解していても、気持ちをおさえることは出来なかった。
「先生…」
「ん?」
近くまで駆け寄り、振り返ろうとする先生を後ろから強く抱き締める。
「おい、鏡、何して…!」
先生は体を動かして私から離れようとしたけど、腕に力を込め、そうさせなかった。
「お願い、先生…しばらくこうさせてください…」
この時はただ、傍にいて欲しいという気持ちだけで彼を抱きしめた。
後のことなんて考えていなくて…今はただ、こうしていたかった。
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