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学校が終わり栄司と一緒に帰る。なんかずっと一緒だな。
「おい、キモイぞ」
「……どうした突然?」
半分諦め、もう半分が同情……ふむ、言動には気をつけようかな。でもめんどいな。栄司相手だし。
「いや~特には。心からの声だよ」
「なおたち悪いな。そういえばお前明日引っ越すんだよな?」
「あっ、そうだった。すっかり忘れてた」
「もう荷物整理したんだろ? 大事なことなんだから覚えておけ」
「そうだね。今日であの部屋も見納めか……」
思い出すとなかなか思い出が詰まっている。
「引っ越し先は市内だろ?」
「そうだね。明後日からは登下校は別になるよ」
「わかってる。しかし日和さんも結婚か……。名字も変わるんだろ?」
「おそれいったか。言っておくけどまだ教えないよ」
「まあいいさ。その内わかるだろ」
そこで僕と栄司の家へ向かう分岐点に差し掛かる。
「おっ、じゃあまた明日な」
「じゃあね~」
お互い別の道を歩く。明日は土曜だから半ドンだ。だから気が楽。栄司とわかれてから二分程度で家に着いた。靴を脱いで家へ上がる。
「ただいま~」
「お帰り」
リビングには僕の母さん谷屋 日和(たにや ひより)がいた。どうやら荷物の点検をしてる。忙しそうだ。なら仕方ない。今日は僕が夕ご飯を作ることにしよう。
「母さん、今日は僕がご飯作るよ?」
「いいわよ。それより葉は荷物は整理したの?」
しまった。忘れてた。まだ半分くらいしかやってない。
「ごめん、母さんじゃあ整理してくるね」
慌てて階段を登り自分の部屋に入る。ホント中途半端だ。仕方ない。始めるか。
………
……
…
「……ふう。終わり」
積み重なったダンボールを見て満足感がわいた。部屋の中はスッキリしている。時計を確認すると作業を始めて二時間が経過していた。珍しい。僕がこんなに集中できるとは。そこで母さんの声が聞こえてきた。
「葉、ご飯よー」
キリがいい、ジャストタイミング。僕は部屋を出て階段を降りた。今日の料理は少しばかり豪勢だ。まあこの家ともお別れだしね。イスに座りご飯を食べ始めた。すると母さんが言いにくそうにこちらを見ていた。内容は知っている。だけどなかなか踏ん切りがつかないみたいだった。
「母さん、僕に報告があるんでしょ?」
促すと母さんは頷いた。
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