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「葉……あなたもわかってると思うけど今日母さんは照哉さんと婚姻届を出してきたわ」
「そっか、おめでとう」
僕は心からその言葉を贈った。
「よ……う…ありが…とう……」
すると母さんは目に涙を浮かべていた。そして静かに泣く。
母さんは一年前から篠羅木照哉という人と付き合っていた。どちらも十年以上前に夫、妻を亡くしていた。だから僕はこの婚約に反対していない。
だって父さんが亡くなってから母さんは体の弱い僕を一人育ててくれた。だからこそ母さんには幸せになってほしい。
「母さん…明日からだよね?」
確認のため落ち着いてきた母さんにゆっくり話しかけた。
「…そうね。ごめんね。引っ越しさせるなんて……」
「大丈夫だよ。そんなに遠くないしね」
明日、篠羅木家に引っ越す。とはいっても、もう僕の名字は篠羅木に変わったけど。明日はまだ谷屋で通す。担任には月曜から変わるといってあるからね。止めていた箸また動かす。そこでまた忘れていた事を思い出す。
「そういえば照哉さんにも子供がいるんだよね?」
「…そうね。忘れてたの?」
「確認だよ。確認」
僕は苦笑いを浮かべる。恐らく忘れてた事はバレたね。確か年齢的にも近かったはず。
残念ながらまだ一度も会ってない。会うことになると悲しい事にその当日に高熱を出して布団の中でダウンしてる。会った時に名前を訊く予定なのでまだ名前も知らない。確か女の子だった事は聞いた。
取りあえずもう母さんは平気そうなので僕はご飯をたいらげ席を立つ。そして明日の事について確認してから自分部屋に戻り暫くしてから風呂に入った。そして部屋をいろいろチェックしてから布団に潜り眠りについた。
………
……
…
土曜日の授業はあっさり片付いた。最後になる家に帰るとちょうどのタイミングで引っ越し業者のトラックが発車していった。家に上がると手荷物以外なにもない。昼ご飯は篠羅木家で食べるらしいのでない。
かなりお腹減ってるのに。
文句を言っても仕方ないので、自分部屋から手荷物持ってリビングへ行く。めんどいので制服で行くことにした。
母さんはもう準備は出来てるらしいのでそのまま外へ出た。そして駐車場から車を取ってきた。その軽自動車なので荷物を乗せたら座る場所があまりなかった。荷物に埋まりながらも座ると母さんは車を発車させた。
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