思い出

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「ねぇ、アンタ?」 大家さんは掃除が終わると声をかけてきた。 周りには、綺麗になった家具並んでいる。。 昼過ぎから、始めて時間は夕方に近くなっている。 狭い部屋だが、想像以上に時間がかかってしまった。 「はい、何ですか?」 修一は洋服を戸棚に仕舞いながら答えた。 「今日は夕飯、うちで食べな」 微笑みながら言ってくるその言葉は断り辛いものがある。 もちろん、修一としては大歓迎だ。 食べ物はまだ買ってきていない。 そもそも、お金がない。 しかし、迷惑にはならないだろうか。 そもそも引っ越しの手伝いまでしてもらっているというのに。 「……、あ、えっと……」 修一は語尾を濁す。 「遠慮しないの」 もう一度、有無を言わせぬ口調で言った大家さんは修一を見つめてくる。 修一はおずおずと頷いた。 「じゃあ、お言葉に甘えて……」 できるだけ感謝も表情に込めようとしたが、それは成功しているかわからなかった。
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