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メニューは、焼魚、煮物、白いご飯に味噌汁だ。
久しぶりの純和風の料理。
焼き魚なんてめったに食べない。
明日からは節約のため、もっとシンプルな物になるだろう。
最後にこんなおいしいものを食べられてよかった。
などと思って修一は心の中で苦笑した。
「ねぇ、アンタさ……」
大家さんの声がちゃぶ台の反対側から飛んでくる。
なんと話しかけたらよいかと考えていた修一は、沈黙を破ってくれた大家さんに少し感謝した。
「両親は故郷においてきたんかい?」
距離的にはさほど遠くもなく陸続きではあるが新幹線もとおっておらず、交通の便が悪いため帰るとなると割と大変である田舎を思い浮かべる。
車があれば簡単に帰れるのかなと思うが、買うお金はもちろんレンタルするお金もなかった。
「あ、はい
母が一人……」
「お父さんはどうしたんだい?」
「5年前に亡くなりました……」
「あ、ああ……ごめんね」
大家さんはすまなそうな顔になる。
「いえ、気にしないで下さい
もう、昔の事です」
そのまま話が途切れてしまうのも嫌なので慌ててそう答える。
「そうかい
ならいいんだけど……」
大家さんはそう言いながらじっとこちらを見つめてきた。
「まあ、気にしないでと言われてるのに気にするのもわるいね」
そう言って笑った。
そのまま他愛のない世間話は続いた。
ご飯を食べながら人と話すなんて言うのもここ数週間なかったので、何だかうれしかった。
ここに越してきてよかった。
大家さんと話をしながらそう思った。
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