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近くに行ってみると建物の細かい部分まで見えるようになる。
とてつもなく古い建物だと言うことに驚かされた。
さびれ方は尋常ではなく、今ここに建っているのが不思議で仕方ない。
台風どころか少しの風でも倒れてしまいそうだ。
木造建築。
この辺りでは珍しい。
優しいはずの春風にあおられてギシギシといっている。
入口の門柱に表札がかかっている。
―――桜咲荘。
玄関は開け放たれており、その奥に部屋がいくつか並んでいるのが見える。
とても小さい、見たところ二階と合わせて、六部屋くらいだろうか。
明らかに人の気配は感じられない。
しかし、木造の建物は柔らかく包み込むような雰囲気をもっている。
人の気配は感じられないが、内部は荒れてはおらずきれいだ。
住んではいないにしても誰かが手入れはしているのだろう。
まあ、当然か、喚気ためか何かは知らないが玄関が開けっ放しなのだから。
「ごめんくださーい」
修一は、出来るだけ元気な声を出しながら玄関に入った。
だめでもともとだ。
そんな気分だった。
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