15人が本棚に入れています
本棚に追加
「え?」
少しして目の前の扉から出てきた初老の女性は、すっとんきょうな声をあげた。
来客などめったにないのだろう。
化粧っ気のない顔で見事に目を丸くしている。
「えっと……、住んでいる方ですか?」
同様に人が出てくるなんて思ってなかった修一も声が上ずる。
自分で声をかけたくせに変なものだ。
少し心臓の鼓動も早まっている。
目の前の玄関で靴を脱いで上がるらしい。
一段高くなっていて、端の方に12個ほど靴が入りそうな靴箱があった。
その中に何足かの靴がそろえられて入っている。
スリッパは揃えてこちら側から履きやすいよう並べられていた。
人の気配がないなんて嘘だったな、と思った。
「……あ、はい……」
あいかわらず驚きながら、戸惑いながら女性は頷いた。
修一はこれまた、はあそうですか、などどあまり意味を持たないことを口走る。
ぽりぽりとかゆくもないのに頭をかいてみた。
桜の花びらが風に乗って、玄関へ入ってきた。
最初のコメントを投稿しよう!