思い出

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次の日──。 修一は、自分の生活用品を持って桜咲荘に来ていた。 あの後少しの見学と説明を聞いた。 失礼かもしれないが、思った通り家賃は破格の値段だった。 もはやここに住むしか道は残されていない。 そう思った。 すぐに入居の申し入れをし今に至る。 今日は引っ越しだ。 しかし、修一は家具も何も持っていない。 そのため、大きめの紙袋4つという親戚の家に遊びに来たと言った方のが正しいような出立ちをしている。 恐ろしいほどの軽装だ。 寮を出るときには思わず笑ってしまった。 こんなにも自分は物を持っていなかったのかと。 そして、笑いとともに寂しさも込み上げてきた。 大学を卒業してからの日々はなんだったのかと。 修一は部屋のドアと窓を開け放つ。 部屋は、大家さんの隣の部屋だ。 そこには、誰が残していったのかわからない、家具が一式置いてある。 「ごめんねぇ、汚くて」 大家さんは、修一が、家具に付いている埃をはらっていると言ってきた。 「あ、いえ、充分です」 大家さんは、雑巾を渡してくれた。 それを受け取りがらそう答える。 「そうかい? そうだといいけど なにせ、ずっと使ってなかったもんだからねぇ……」 そんなことを呟きながら大家さんは掃除を開始した。
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