武田信玄 上洛

4/16
前へ
/38ページ
次へ
織田領 光秀「大事ないか?晴忠」 松本「お気になさらず。」 松本は鞋を結びながら答えた。 松本と光秀は信長からの書状を預かり、ある大名に届ける道中にあった。 光秀「今日は此処でよかろう。」 そういうと光秀は道をそれ野宿の仕度を始めた。 辺りは闇に染まりつつあった。 火を起こしてながら松本は光秀に尋ねた。 松本「しかし信長様は本気でしょうか?よりによって此処に書状を送るとは。下手をすると織田は一気に崩れかねません。」 光秀「だが上手くいけば、武田を嵌めることが出来よう。賭けじゃな。」 松本「成功するとお考えで?」 光秀は笑って答えなかった。 光秀「時に前から気になっていたのだが。そなた浪人の時からなかなか見事な刀を差しておったな。」 松本はビクッとした。この刀は信玄から餞別として拝領した刀であった。ここで下手に答えると勘繰られるかもしれない。しかも武田菱の家門も入っている。 松本「・・父の刀でして。」 咄嗟の機転で最もらしい文句を捻り出した。 光秀「ほう。して父君は?」 松本「北条との戦で亡くなりました。」 光秀「すまん。悪いことを聞いてしまったな。」 松本「良いのです。これも運命でしょう。」
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

281人が本棚に入れています
本棚に追加