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織田領
光秀「大事ないか?晴忠」
松本「お気になさらず。」
松本は鞋を結びながら答えた。
松本と光秀は信長からの書状を預かり、ある大名に届ける道中にあった。
光秀「今日は此処でよかろう。」
そういうと光秀は道をそれ野宿の仕度を始めた。
辺りは闇に染まりつつあった。
火を起こしてながら松本は光秀に尋ねた。
松本「しかし信長様は本気でしょうか?よりによって此処に書状を送るとは。下手をすると織田は一気に崩れかねません。」
光秀「だが上手くいけば、武田を嵌めることが出来よう。賭けじゃな。」
松本「成功するとお考えで?」
光秀は笑って答えなかった。
光秀「時に前から気になっていたのだが。そなた浪人の時からなかなか見事な刀を差しておったな。」
松本はビクッとした。この刀は信玄から餞別として拝領した刀であった。ここで下手に答えると勘繰られるかもしれない。しかも武田菱の家門も入っている。
松本「・・父の刀でして。」
咄嗟の機転で最もらしい文句を捻り出した。
光秀「ほう。して父君は?」
松本「北条との戦で亡くなりました。」
光秀「すまん。悪いことを聞いてしまったな。」
松本「良いのです。これも運命でしょう。」
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