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ちゅんちゅんと耳に快い小鳥のさえずりが響く。
深夜からようやく早朝と呼べるようになったこの時間帯、まだ太陽は昇りきってはいない。
そんな中、おおきな肩掛け鞄を二つ下げた少年が、やや小走りで町を横断していた。年のころは十代の初め、鞄の一つは布製で、もう一つはおかもちのようなものに紐がついた木製だった。
それらを両肩にかけ、体で交差させている。随分と不安定な様相だったが、少年は慣れた様子で器用に荷物を水平にして移動していた。
少年…、オリゲン=バーランドはいつものように、ささやかではあるが重要な、自分の仕事を行うべく町の入り口を訪れる。
一日の始まり、それは一杯の牛乳から始まる。
この言葉はオリゲンの勤める会社…もっとも、社員はオリゲンと彼の友人五名、それに社長で合計七名のささやかな物だが…、の、社長の言葉だ。
「加えて情報も入るならばその日の備えに不備は無い、っと…。ミスター、おはよう!」
牛乳と新聞社、同時に経営する社長ならではの言葉の続きを呟くと、オリゲンは町の入り口に常駐する門番に声をかける。早朝勤務の彼とはもう顔馴染みだ、というより、狭い場所の事であるから、住人全ての顔と名前、ついでに性格や趣味も大抵は把握している。
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