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「おう、オリゲン。お早う。今日も早いな。感心感心」
「ミスターはその一時間前にはここに立ってるんだから、なんか褒められても手放しじゃ喜べないよ」
「ははっ、そりゃそうだ」
軽口を叩きあいながら、オリゲンは手馴れた様子で両の鞄から商品を取り出す。布製からは単色刷りの新聞『タウンニュース』、木製からは牛乳瓶だ。
「昨日何か変わった事はあったか?」
新聞と牛乳を受け取りながら門番は少年に尋ねる。新聞社に勤める彼は年齢が低くとも立派な記者の一人であるからだ。朝刊は勿論後でゆっくり読むが、目新しく大きな情報は彼に聞いたほうが遥かに手っ取り早い。
「あんまりないよ。強いていうならマダム・アンバー家のルルが逃げ出した位かな。見つけたら連絡よろしくってさ」
「へえ、料理人のオバサンの所の猫がか…。まあどうせ二、三日中に帰ってくるんだろうけどな」
「毎日あの料理の残り物食べてるんだから、今更野生の食べ物なんて不味くて食べられないよきっと。マダムもあんまり心配してなかった。最近太りすぎてたからダイエットにはちょうどいいって言ってたもん」
「ははっ、暢気なもんだ」
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