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小さな噴水があり、防ぐような障害物が無いため…それがあまりにも大きすぎるということもあるのだろうが…、ここの入り口と、出口、二つの門がよく見える。
噴水近くのベンチにすとんと腰を下ろす。鞄の中から、自分用に社員割引で買っている牛乳を一本取り出した。
大きさはどの位だろう、といつも考えるが測った人間の話は聞いたことがないのでよく分からない。しかし長身である門番の彼を十人縦に並べたとしても超えられるかどうか怪しいシロモノであることは確かだ。
入り口の北門は赤い。何故なら、使われることが無いため、少し使い古されてしまったからだ。きちんと週に二度、ここの清掃業者が磨いてはいるものの、向こう側を磨くことが出来ないため、やはり影響を受けて古びてしまっている。
対して、出口の南門は黒い。それは、使われるからではなく、今までに一度も使用されたことが無いため、赤錆を通り越してしまっているからだ。
そしてその門の両端は、門以上に大きな壁で繋がって、この場所をぐるりと囲んでいる。一応此処は、国という括りに入るのだ…、と彼の祖母は教えてくれたが、どう見たってせいぜい町規模だよなあとオリゲンは思っている。…土地は確かに有り余ってはいるけど。新聞の名前だって『カントリーニュース』じゃなくて『タウンニュース』だし。
さて、と牛乳を飲み終えた辺りで仕事を再開することにする。
朝配達の楽しい所はこれからだ。
ようよう空が明るくなり、早仕事の人間たちが置きだす時間。
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