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「…じゃあ、さっくんはどの時が桜の一番キレイな時だと思う?」
ふいにそんな質問を投げ掛けられる。
「そうだな…ありきたりだけど満開…かな?ユズの一番は?」
「オレはね…散る瞬間」
「…散る瞬間…?」
確かに桜吹雪と称される程だからキレイだが…何でまた?
そんな思いが表情に出ていたらしい。
「確かに咲き始めも満開もそれぞれキレイだけどさ、なんか散っていくトコロが一番好き。散りゆく運命と知りながら自信を持って咲き誇って…地に落ちるその刹那までも観ている人達にキレイだと思わせるその姿がさ…何とも言えなくて…無性に愛しく思えるんだ」
そう話をする柚樹の横顔は、咲き誇っている桜に引けを取らない程にキレイで穏やかな笑みが浮かんでいた。
俺は…その横顔にしばらく見惚れていた。
そんな俺達の間をやわらかな風が通り過ぎていった…。
fin
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