第一章・―そんな妖怪、知らないよ―

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 四夜が最初に放った一言は、その依頼内容を聞いて、クライアントが帰ってからのものだったのである。 「文車妖妃、……ねぇ」  四夜が呟いたのは、まぎれもなく妖怪の名前である。  俺にとっては初めて聞く名前だったが、その辺は五夜が説明してくれた。  皆さんは御存知だろうか?  文車妖妃と言うのは、“ふぐるまようひ”と読むらしい。  そして字面からも、何となく想像出来る人もいるかもしれないが、文(ふみ)、つまり今でいう手紙にこもった人間の情念や、執念といったものから生み出された妖怪らしいのだ。
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