海岸にて

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海岸にて

自宅から近い海岸沿いの道を私は歩いていた。今日は、何日?今は何時だろう?そんなことを考えながらただ歩いていた。その海岸にはあまり大きくない川の河口があり、細い川の流れがこの時間に海のほうへ流れ込んでいた。ちょうど干潮の時刻だった。海水が何時間か前まではそこにあった形跡をのこして堤防は湿ったあとを残している。  海岸線にそって堤防は続く・・・堤防にそって高潮よけのテトラポットが幾重にも水面とこちら側をへだてているどこにでもある海岸にいた。もう、ずっと何時間もこうしてあてもなく歩いているような気がする・・・時間があることすら今の私にはどうでもいいことのような気さえするのに頭の中にあるかすかな感覚が時の移ろいをまだ気にしているようで少し可笑しくなった。ふと、空を見上げると雲が所々に浮かんでいる。日差しは春の暖かな日差しからややゆっくりとそのかげりを冬に戻していくような冷気を含みだしていた。まだ春といっても夕刻が近づくと肌寒い。  寒い・・・・。そう感じて私は思わず両手で自分の体を包んだ。また、可笑しくなった寒い・・・おかしなも のだったもう、寒いとか暑いとかそんなもの関係ないところへいこうとしているのに。
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