ハルヒコとの出会い

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どこまでが不幸でどこまでが幸せかなんて尺度があるとすれば、いったいどこの学者が開発した色ものさしなのだろう。 同じように、何が正しくて何が正しくないかを決めるものさしもあるならば、是非ともテストに使いたいと思う今日この頃。 くだらない詩人気取りに耽るのにも飽きて、目的もなく窓を見る。相変わらずところどころ白く濁っていて、スライドする凹みには埃や得体の知れないタール状のカス、網戸も擦り抜けるような小さな虫の死骸が溜まっていて食事時に見るべきではないモザイクさがある。 退屈だ、ああ退屈だ。 たかだか自分の席から見える範囲の景色は見飽きたし、だからといって窓自体見ても暇潰しにすらなりはしない。 見て見ぬふりをすべきモザイクさを垣間見てしまった直後だが、気にせず机の中に隠してあるチョコの破片をひとつ口に放り込んだ。 先公の行動を把握し、素知らぬ顔をしながら瞬時にチョコを口まで運び、かつそのまま口を動かさないように味わわなくてはならない。 こんなことに知能を使う暇があるなら単語のひとつでも覚えたほうが後々の人生楽に生きられるのかもしれないが、どうせ次の瞬間には隕石の墜落により氷河期が訪れるかもしれない世界で呼吸しているのだ。 漫画やアニメやライトノベルやまして映画の主人公じゃあるまいし、スティーブン・セガールでもない私が生き残れる可能性なんて、スティーブン・セガールにものさしでバトルロワイヤルして生き残れる可能性より遥かに低い。 てゆうか人類は滅亡すると踏んでいたり蹴っていたり。 蹴るのは主にテストや休日の変なセミナーだが。 欠伸をすれば、チョコの風が舞い上がり匂いでバレやしないかと口を塞ぐ。 馬鹿みたいな杞憂ばかりして。 平凡に身を浸せば馬鹿になる。 ちらりと横に座る男の様子を伺うが、首席で入学した割に授業中はもっぱらうたた寝か携帯かゲーム機だ。 今は…シャーペンを片手に熟睡している。 平凡過ぎて欠伸が出る。勢い余って吐き気もする。 …だからとは言え、非凡に身を窶せば変人になる。 勝手なものだ、結論など。そこから生まれる呼称など。 巡回を開始した足音に反応して、後ろに座る谷口が素早く男の背をシャーペンで刺した。 ビクンとして男は目を開き、特に慌てる様子もなく勉強していた体を装う。  
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