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北高。
家から歩ける距離。
一応の進学校。
平凡な中学三年生が踏み出すことになる、平凡な高校一年生。
それ以上のことはあまり記憶にない。
学校の理念や方針など聞いたが、結局は在り来りの枠の中に納まる程度のものだろうから。
中学からの友達である国木田とは運よく一緒のクラスになれた。
そもそもあまり一緒の高校に入った友達はおらず、大体はもっと駅近くの洒落た高校か、女子高に入学していった。
元々あまり多くない友達グループだったので、グループ内で北高を選んだのは国木田と私だけ。
「さっちゃん美術専攻だってさ」
「そりゃ死ぬほど宿題が出そうだ」
他愛のない会話。絵の好きな者が美術を専攻しても当然の範疇で平凡としか言いようがない。
「真田さんは弓道の腕を買われて推薦入学」
「マサはパティシエ志望で調理師専門学校」
「慶は?」
「駅前のオシャレ私立に入学しなさったよ。あそこの制服が最高に可愛かったらしい。」
「あそこ流行ってるもんね、制服も備品も学校自体素敵だし」
「そして高い。」
「私立なら普通の値段だけど指定物が溢れてるから」
「学費も高いが、お鼻も高い。あそこの連中とは並んで歩きたくないね。」
「あはは、浮くだろうなー慶」
嫌だねぇ、格差格差。
しかしまあ親の財力で子供の選択肢が変わるのは当たり前のことだから、これすら平凡の範疇か。
「それでもって僕とキョン」
「なにかな国木田君。」
「頭は良かったけど特に突出したモノも見付からず、そこそこの大学に入るために進学校を選んだ」
「その通り。」
「平凡だよね」
頭は良くても明確に何がやりたいかなど見当もつかずそれをつけるための者達が集う砦へ続く道を国木田は、まるで楽しい遊園地が待っているようにクスクス笑い闊歩している。
私はとてもそんな気分にはなれず呆れた表情で、浮かれる国木田の裾を掴むが、ひとつだけ論じなくてはいけないことがあった。
「目的あって行動すれば結果が出るのは当然の事だろ、それすなわち平凡だ。目的が不明瞭で行動して尚且つ結果が暗幕に隠されてる方が平凡じゃないね…」
「僕らは非凡ってこと?」
「んや、私らにはちゃんとそこそこの大学に受かるっつう目的がある訳だから平凡」
「なーんだ」
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