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パパそろそろかな──。少女は母親の運転する車の後部座席でそう思いながら窓の外を流れていく東京の街並みに目を向けていた。 何日も前から、毎日眠れない程に楽しみにしていた家族でのテーマパークへの二泊三日の旅行。 家族そろって、泊まり掛けで遊びへ行けるのがとても楽しみだった。三日目の夜のパレードまでは、家族四人で夢のような時間に浸れる筈だったのだ。 少女の、そんな宙に浮くような気持ちが沈み込んだのは今朝。テーマパーク内のホテルへチェックインもあり、七時頃から身支度を整えていた時だった。 今朝目覚まし時計が鳴るより早く眼が覚めた少女は、ベッドからすぐに抜け出して、部屋の反対側に位置するベッドの上で眠る姉を揺り起こす。 寝起きの姉の手を引っ張り部屋を出て階段を降り、足早に一階のバスルームへ向かった。素早くパジャマを脱ぐと、姉妹でシャワーを浴びる。姉に頭を洗って貰った後、少女は洗面台の前に立ち、姉を急かして濡れた頭を乾かして貰う。自分が姉を急かすということ以外はいつもと何も違わない朝。 優しい姉に甘えるのが好きだ。少女は洗面台の鏡に写った幸せそうな自分と、今年中学二年生になった姉を見てつくづくそう思う。目線を少し上に向けると、鏡越しに後六年経ったら自分もこうなるのだろう、と想像出来る程に似通った顔が少女に微笑みかけている。 吸い込まれる位に澄んだ黒い瞳、透き通りそうな白い肌。瞳と同じ色の髪の毛は胸元まで下ろして、前髪は少し眉にかかる程度で切り揃えている。絵に描いた様な大和撫子、姉がよくそう言われているのを少女も知っている。 そんな姉が何より自慢だ。姉を意識して髪型も似せた。妹の目から見てもとても美人で可愛い姉。貴女達は本当によく似ているわね、と親戚達に言われるのは少女にとって何より誇らしかった。
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