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トレイの上に乗せた二人分の料理とミルクを慎重に階段の上まで持って行くと、部屋の扉が少し開いているのが目に入った。 料理を落とさないようにトレイを片手に持ち変え、部屋の扉を左手で開けながら「ほら。ごはん持ってきたよ?今日遊びに行けなくなった訳じゃないんだから、ちゃんと食べよ?お姉ちゃんも食べるから」と声をかけながら部屋に入る。 「いらない」姉の言葉を聞いたベッドの上の丸く膨らんだ布が喋った。 「ほら。出ておいで?まだ食べかけじゃない。全部食べないと疲れちゃうよ」姉は持ったトレイをテーブルに置くとベッドの上の布を優しくめくってあげる。 「お腹減ってないもん」 両手で膝を抱えベッドに横になっている妹を困ったように見ると、「じゃあお姉ちゃんも一緒にごろごろしちゃおうかな。ほら、ぎゅうっ」と笑って妹の隣りに寝転がり、自分より小さな身体を抱き締めた。 「もう、狭いからやめてよー。お姉ちゃんキャシャって言われててもベッドに二人寝転がったらぎゅうぎゅうなんだから」妹は不機嫌ながらも少しじゃれたような声を出した。 「ふふ。暖かいなあ。流石私の妹!細いけど暖かくて柔らかーい。ぬいぐるみ抱っこするより落ち着くよー」 「もう……。変な事言わないでよお。これじゃあどっちが妹かわからないよー」妹の声に少し明るさが戻って姉は少し安心した。 「それにしても華奢って言葉よく知ってたねー?偉い偉い」 「子供扱いしないでよ。私だってもう二年生なんだから」 彼女位の年頃になると子供扱いに抵抗を示す。妹の子供扱いしないで、という反応はいつみても姉の口もとを緩めさせるには十分な愛らしさだ。 「ねぇ?今日どのアトラクションに乗りたい?」と話を変えて聞くと少女は言葉を詰まらせてしまった。 「乗らないよ……。パパ今日お仕事行っちゃったもん……」悲しげに答えた妹を姉は少し強く抱き締めた。 「ほら。聞いてなかったの?お昼頃にはお父さんも合流出来る筈だって言ってたじゃない」姉の言葉に少女は「え……?パパそんな事言ってた……?」と呆けた表情をした。 「もう。仕事って部分でいっぱいになっちゃったのね?仕方ない妹ちゃんだなぁ……。ほら、お姉ちゃんもまだ朝ごはん全部食べれてないから一緒に食べよ?」 「え……でも……」少女はリビングでの事もあり、多少ばつが悪そうにしている。 「あれ?お姉ちゃんに二人分の料理食べさせる気?お姉ちゃんそんなに食べられないし、残したら勿体無いって怒られちゃうなー」
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