第一章

19/19
128人が本棚に入れています
本棚に追加
/464ページ
「・・・・・・へ?」 豊高は呆気にとられていた。 外ではまだ激しい雨が降っていた。生臭さを含んだ水煙の臭いがする。 彼は少し目を伏せ 「・・・・・・すまなかった」 と呟いた。豊高は怪訝そうに哀しげな顔を見つめる。そして豊高の胸に平べったく重いものと、細長く軽いものが押し付けられた。豊高はそれらを抱えるとバランスを崩し軽くよろけた。 屋敷の主は名残惜しそうに扉を閉める。手元には学生鞄と一本の黒い傘が残った。 豊高はしばらく扉の前で呆けていた。彼の意図が分からなかった。だが何故か罪悪感が胸に滲む。 豊高は黒い傘を広げ、何度も振り返りながら家路に着いた。
/464ページ

最初のコメントを投稿しよう!