第二章

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父親とはろくに話したこともない。 いや、父親が話し掛けるなと言ったのだ。 父親が嫌いな豊高にとっては好都合だったが。 そう言われたのは豊高が中学生の、いや、登校拒否を始めた時だった。 「もう出てこなくていい。話し掛けるな。世間に、顔を見せるな」 ドアの外から放たれたその言葉は、どろりと真っ暗な自室に広がり、瞬く間に自分を窒息させていったことを豊高は覚えている。 日が立つごとに、父親の悪意に満ちた言葉が部屋に充満していく。 ここにいては、本当に気が狂ってしまう。 そう悟った豊高は、中学校を卒業するまで保健室登校を行っていた。同級生とすれ違う時等は白い目で見られることはあったが、暴力を振るわれることは二度となくなった。 傷害事件になりかけたので教師が釘を刺しておいたのだろう。
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