第二章

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だが陰湿な嫌がらせは度々あり、ある日豊高の中でぷつんと何かが切れた。 豊高は落書きだらけの教科書を一式、自ら教室のごみ箱に捨てごみ箱ごと燃やした。 それをきっかけに、教師は嫌がらせを見て見ぬ振りをするようになった。 ただ一人、あの若い女性の養護教諭を除いて。 壊れかけていた豊高をギリギリの状態で引き止めていたのは彼女だった。 唯一の豊高の味方であった。 だが豊高はそれを疎ましく思っていた。 態度や声の掛け方が母親に似ているような気がして。むしろ憎んでもいた。 いっそ、壊れてしまった方が楽だったのに、と。 人間は無駄にしぶとい、と豊高は感じていた。 自分を追い込んでも追い込んでも、豊高は狂いきれなかった。 豊高は、今でも、自分が心底嫌いだ。
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