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「歌奈」「歌奈?」
少し薄暗くなった外を、必死に声を出しながら走る。
どうか歌奈、無事で居て?
歌奈に何かあったら、生きていけない。
歌奈が僕の全て。
だから、早く帰ってきて?
僕の側から離れないで?
ふと目に入った携帯。
そうだ、歌奈の知り合いに電話をすれば良い。
慌てて通話ボタンを押して電話をしたのに
「う~ん、ごめんね。分からない」
何処にも歌奈は居なかった。
友達の家じゃないなら一体何処?
泣きそうになりながらも、もしかしたらもう帰って来てるかも?という淡い期待を胸に一度帰宅する事にした。
帰宅するなり
「夜御飯も食べずに出掛けるから、心配したでしょ?」
母に言われ
「ごめんなさい」
素直に謝った。
靴を脱ぎ、手洗いをしようと洗面所に向かった時、ガチャリ玄関から小さな音がした。
「ただいま」
漸く聞けた声。
「歌奈!!!」
慌てて駆け寄った。
「僕すぐ帰る様連絡したよね?携帯も繋がらなかったし、今迄一体何してたワケ?」
少し怒り気味に声を出すと、歌奈は友達と夜御飯を食べていたと言った。
『ぇ!?』
引きつる顔。
それって誰?
先程歌奈の友達には全員電話をした。
何故知ってるかって?
ソレはいつもの策略だ。
皆可愛らしく頼めば、簡単に教えてくれた。
新たに出来た友達か?
なら、早めに連絡先を入手しなければ。
今回みたいに又勝手な事されたらムカつくからな。
「ごめん。今度からは絶対連絡入れるからさ、許して?」
ね?って感じに傾げられる首。
『っ、可愛過ぎ』
「仕方ないなぁ、今回だけだからね?」
歌奈は狡い。
僕が甘えられると絶対断れないって知ってて、そう仕向けてくる。
でも歌奈。本当に今回だけだからね?
もし今度僕に何も告げずに消えたら、僕は何をするか分からないよ?
覚悟してて。
「聖?」
「ん?」
「今ちょっと怖い顔してた。ごめんね、心配掛けて」
ああ、しまった。
歌奈の前で本性が飛び出す所だったよ。
危ない危ない。
僕は優しくて聞き分けの良い可愛い弟。
そうじゃなきゃ、警戒して歌奈は近付いてくれないでしょ?
「もう心配させないでね?」
軽く頬を膨ませ、可愛らしく唇を尖らした。
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