Ⅰ.はじまり

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誘われ辿り着いたのは、お洒落なレストラン。 学生にとっては少し高めなメニューばかりで 『足りるかな?』 持ち合わせが激しく気になり、財布を確認したくなった。 が 「此処は俺が無理矢理誘ったんだから奢るよ。何が良い?」 ニコニコ言われホッとしたが、一体何を頼もう? 此処は遠慮して安い物を頼むべき?それとも好きなのを頼む? う~ん、分からない。 真剣な顔で悩んでいると 「なら、俺と同じので良い?」 聞かれ 「はい」 確認もせず頷いた。 『うっわ、スッゲェ美味いコレ』 目の前に現れたのは、凄く高そうなハンバーグ。 ナイフを刺した瞬間溢れ出した肉汁。 良い匂いと見た目を裏切らない最高の味。 「美味しい?」 笑顔で聞かれ 「又来たいかも」 満面の笑みで返したが、金銭的に厳しい為二度は来れないだろうな、多分。 他愛もない話をしながら食べる料理。 初めて逢って話をした筈なのに、不思議な事に彼は思いっ切り普通だった。 当たり前の様に宮城って呼ぶし、凄く友好的だ。 対して俺は名前さえ知らない。 時々擦れ違う話題。 知らない名前が出て来るんだ。 でも、彼が笑ってくれるのが嬉しくて、彼の側に居られるのが幸せで 「宮城?」 「ごめん。話続けて?」 俺は敢えてその違和感に気付かない振りをした。 「ただいま」 帰宅するなり 「歌奈!!!」 呼ばれた名前。 「僕すぐ帰る様連絡したよね?携帯も繋がらなかったし、今迄一体何してたワケ?」 「ごめん。偶然友達と逢ってさ、夜御飯御馳走になってた」 明らかに怒ってる口調で聞かれ 「ごめん。今度からは絶対連絡入れるからさ、許して?」 ね?って感じに上目遣いで小首を傾げると 「仕方ないなぁ、今回だけだからね?」 聖は許してくれた。 聖は1つ違いの弟だ。 双子では無いのに物凄く似ているらしく、よく間違えられる。 俺的には聖の方が可愛くて良い子で、全然似ている様には見えない。 皆目が悪いのかな? 「ねぇ歌奈」 「ん?」 「なんか今日スッゴク機嫌良くない?」 不思議そうに聞かれ 「ちょっとな」 ニコニコ笑いながら部屋へ向かうと 「歌奈?」 背後から、腑に落ちない様な聖の声が聞こえた。 《明日又此処で逢えないか?》 別れ際に聞かれた台詞。 《はい》 笑顔で返すと 《良かった。なら又明日》 彼は物凄く嬉しそうに微笑んだ。 幸せだった夜御飯を想い出しながら 『早く明日にならないかな?』 俺はワクワクしながら布団に入った。
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