月夜の散歩家たち

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    夜空からの青い微笑を受け止めていると、袖を引かれて振り向いた。      「あのね、令。」 と、月絵が囁く。 まるで内緒話でもするように、僕の耳元に口を寄せて。   「いまお金持ってる? ちょっと貸してよ」   「何するの?」   「仕掛絵本……絵が飛び出すの。子供のころ欲しかったやつ、同じのがこの店にあったんだ」     飾窓を指差す。そこには夜の庭園が安っぽい色紙で立体化していた。     「あれが欲しいの」     じっと目を見る。     いいよ、  とぼくは言った。    
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