月夜の散歩家たち

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    ここはどこだろう?      夜の庭園。静かにwaltzが聴こえてくる。     給仕がやって来て、向こうの館に案内した。    「さあどうぞ。着替えはこちらに」        数分後、夜間用略式礼服に着替えさせられたぼくが庭園の一隅に立っていた。       へんな感じだ。         待っていると、黒いドレスに着替えた月絵がやって来た。     「あ、可愛い」     「まあね」と言って、ぐっと胸を張る。ちょっと照れて。     「踊ろ。令」     「……なんでこんなことになったんだろう?」     と言いながら、ぼくは月絵の手をとった。ゆっくりと踊り出す。     月が青かった。     …… Moon Shine waltz(♪       月絵の瞳から零れ落ちる月光が、ぼくに安易な恋心を売りつけようとしているらしい。   いやひょっとすると、もう手遅れかもしれなかった。   「令。月が青いよ」   「うん」   「見てる?」   「見てるよ」   「そんな短篇を、令は書いたことがあったね」   「え?」   「知ってるよ」   「なんで……」   言いかけて、気付いた。   月絵の瞳の中で揺れる三日月に、誰かが腰かけてる。     シルクハットを脱いで、優雅に一礼する彼に見覚えがあった。たしか以前夢で……           あ、そうか。                    (これは夢なんだ)  
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