第七章

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真由と別れてから、3ヶ月が経とうとしたある日。 真由が実家にいる事を、麻子が知った。それを誠二に伝えた。 真由の実家は、ここから2時間ほどのところにあった。 誠二は、車を走らせ、急いで真由の実家へ向かった。 3ヶ月の日々が、何年にも感じられるほど辛く、長い気がした。 真由が受け入れてくれなくても、誠二は真由がいなければ生きていけないとわかった。 真由の存在が、誠二の全てだった。 女を追いかけた事など、今まで一度もなかった。 来るもの拒まず、去るもの追わず。 それが、男のプライドのように、思っていた。 だけど、そんなプライドは、人を愛する事には、必要ない。 のどかな川沿いを、走らせていると、一人の女性が歩いていた。 「真由!」 誠二は、車を止めた。 そして、車のドアを開けると、真由に叫んだ。 「真由!!!愛しているんだ!!!!」 真由は、後ろを振り返り誠二を確認した。 「誠二・・・」 誠二が、真由に近付いてきた。 「真由、ごめん。愛しているんだ。戻ってきてくれないか・・・」 誠二の目には、涙が溜まっていた。 真由は、誠二の涙など見た事がなかった。 真由は、誠二の頬に伝う涙を、手で拭った。「泣かないで。」 「真由が欲しい。」 そう言うと、誠二が真由を思いっきり抱きしめた。 「誠二、誠二・・・」 真由も涙を流しながら、誠二の背中に両手を回した。 そして、互いにきつく抱き合う。 「迎えに来てくれたの?」 「うん。」 「ありがとう。」 「真由、俺が真由を守るから、戻ってきて欲しい。」 「誠二は、去るもの追わないんじゃなかった?」 意地悪に、真由が聞き返す。 「俺は、愛する者は、追うと決めたんだ。真由を離す気はない。」 そう言うと、誠二は真由にキスをした。 「誠二、ここ、道の真ん中だよ。」 真由は、恥ずかしそうにそう言った。 「どこだって、関係ないよ。俺は今、真由しか見えてない。」 真由は、その言葉が嬉しかった。 「私も誠二しか見えない。ごめんね。私、逃げたりして。」 「ううん、俺こそごめん。守ってやれなくて。」 二人は、しばらく抱き合ったまま、その場から動けなかった。
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