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「誠二、真由、俺は明美ともう一度やり直そうと思う。俺は、真由がずっと好きだった。
でも、俺自身が真由を裏切った。
真由の事を想いながら、辛くて苦しかった。
同時に、俺は浮気相手だった明美に救われたんだ。
今はあんな風になってしまったけど、俺を励ましてくれた明美は、例えそれが演技や、真由に対する嫉妬心からだとしても、確かに俺は立ち直れたんだ。
真由に再会して、真由の事がどんどん好きになってしまった。
明美は、俺が真由を好きになったのは、関係ないと言ったが、俺はどうしても、自分が許せないんだ。
真由も、明美も不幸にした。
真由は、誠二のお蔭で幸せになれたけど、俺自身は、誰一人幸せに出来てない。
だから、子供のためにも、俺自身のためにも、誰かを幸せにして上げたいと思ってるんだ。」
隼人を責める気など、誠二には最初からなかった。
「次こそは、できるんだろうな?明美ちゃんを幸せに。」
誠二の言葉に、隼人は力強く頷いた。
「絶対にしてみせるよ。男として、父親として、明美と子供を幸せにしてみせる。」
病室の扉の向こうで、明美が啜り泣く声が聞こえた。
彼女も本当は、最初からわかっていたのだろう。
誰かの幸せを、自分の幸せには出来ない事を。
そして、人の不幸の上に成り立つ幸せなど、決してないという事を。
それにやっと、気づいてくれたと、真由は信じたかった。
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