なかないことり

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*いつか昨夜になる今夜* 硬質な雨の音 月を抱きすくめてしまった雲 電線は影絵 グレーに泣き虫の黄色をひとしずく。 腹這いのわたしに 鉛玉が蓄積されていく どこかのオオカミさんみたいに 水溜まりに沈んでしまうのかしら レースのカーテンがたゆたう夢くらい見させて お手玉のあずきをざらざらと回して 青の中うたた寝したかったのに 時計が何時を指したって急いでいるし 空だって飛べない 色とりどりのアイシャドウは、そのどれも選べない そうしているうちに目を覚ましても まだ夜でまだ雨で 黄色はもう流れていて 雲は月を離してはくれない 月もそれを望んではいない 鉛玉はあずきにはならない わたしは腹這いのまま 中指をはりつめて黄色をさぐった あしたてんきになれ、と 心から願った  
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