中央線/屑星

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中央線/屑星

  不器用に並んだビーズを 指折り数えるうちに あかい陽はとくとくと パンタグラフ沿いに団地の屋根へ それからその壁面の、欠けた2の文字をすべり降り 紺色ににじんでいく空 から、 網膜がとらえられる光はほんのわずか 世界がどれだけの星で満たされているかなんて わかりえないことだ それでも私はひょうひょうと 親指でひとつずつ拾って それからあるいはひょうひょうと 人差し指で弾き捨てる 満たされないけど パンクはしない 並べ過ぎたならどうせ こぼれ落ちるのだし 漂っていればいい ゆうら、らら 砂の山の頂点の、臨界点に達すれば 崩れ去るのが理だと 生まれながらに知っていた だから私はひょうひょうと 親指でひとつずつ拾って それからあるいはひょうひょうと 人差し指で弾き捨てる を、 繰り返していく中で 些細で大きな何らかを すわろふすきーみたいなキラキラの一粒にして 留め具に近い方から埋めていくのだ いつか漂うことすら終わってしまう日に このごく短いテグスが キラキラだけでできあがっていれば それで十分だから。 と、そんなこと考えても考えなくても すべり落ちた陽は一周して 朝がくるのだった 欠けた文字を直すこともないままに  
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