日の出

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*細雪* 星のささやきを聞いておくれ、と 紙片を折り重ねるように 間に合わせのかりそめの 路端の泥になるだけの それはそれは精いっぱいの 主張のような下降。 わたしは立っているだけで 凍える爪先からでさえ 熱を発しているのに おちる、だけで それ、だけで ひとつの悲鳴しか赦されない数十秒を 終えていく ひとひら、ひとひらを 目で追うことすらできないのです  つかまえて。 つかまえても 融けて、感覚の鈍った 指を 濡らすのみの はじめから無かった ように かなしみを 紡ぐ暇さえありません 人々はそれを疎ましく払いのけ 傘とこうべを垂れ 早送りの街並み それでも 時を歪めるように 縦軸はスローモーション 音さえも閉じ込めて 世界は、せ、かい、は なんと冷たくて なんと白くて なんと美しいのでしょう! 叫びはささやきの中 空間という瞬間の列なり 捉えどころもなく いいえ、 捕えても得るものなどないのでしょう わたしはただ佇むだけで それ、だけで それだけでいいのだと 手のひらで融けた水に 感覚を呼び覚まして また、横軸に戻っていく 星の声を聴きながら。  
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