§第4章

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「ねえ、美咲ー」 ぐいぐいと夏帆に押し迫られて、あたしは思わず夏帆の腕を取った。 「夏帆。いいかげんにしてよ!」 たまりかねて夏帆の右腕をつかんで、頭上にかざす。 夏帆のブレザーの袖がずれて、夏帆の真っ白な肌が目に映った。 瞬間、あたしは夏帆の腕になにやらびっしりと書かれた刻印を見つけた。 タトゥー!? あたしは、思わずぎょっとした。 高校生でタトゥーを入れることは、普通、禁止されている。 それでも入れる人はいるけれど……。 夏帆が好んで入れるようには、どうしても思えなかった。 「夏帆、その腕……?」 あたしが訊くと、夏帆は露骨にいやな顔をした。 あわてて制服の袖をおろし、凍りつくようなまなざしであたしを見る。 「美咲、なにも見てないよね?」 念を押されると、あたしは、だんだん夏帆が怖くなる。 理由は、わからない。 夏帆の右腕のタトゥーは、決して見てはいけないもののような気がした。 「やだ、美咲。マジな顔しちゃってー」 瞬間、夏帆が腰までの長い黒髪をかきあげて、ペロッと舌を出した。 「birth4、あたし、美咲にも楽しんでほしいだけなのに」 話題を元に戻して、なにごともなかったかのように夏帆が笑う。 困ったときには、頬杖をついて、指の爪を噛む。 いたずらっこのように笑うときには、舌を出す。 見慣れた夏帆のクセも、いまだに馴染めない。 一緒にいる時間が長くなるほど、 あたしの笑顔は、凍りつきそうになっていく。
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