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あたし、秋月美咲、17歳。
都内の私立高校に通う、高校2年生。
襟元のリボンを蝶々に結び、真っ青なブレザーに袖を通す。
翌朝、家を出ると、朝から真っ暗な雲が一面を覆っていた。
今にも泣き出しそうな空模様。
学校へ着く頃には、大粒の雨が滝のような激しさで降り出した。
傘をさしていたにも関わらず、体はびしょ濡れだ。
「おい、美咲、タオル持ってないか?」
下駄箱で後ろから声をかけられ、あたしは振り返った。
やや筋肉質な体に、少し濃い目の顔。
天然のパーマか、寝癖かわからない茶褐色の髪。
見慣れた顔が、目に映ってくる。
「おい、美咲ったら」
あたしより、頭ひとつぶん高い、171センチ。
隼人だ。
あたしは、無言でバッグからタオルを取り出して、隼人に放つ。
「あれ? 挨拶なし? しかも、拭いてくれないわけ?」
隼人が拭いてくれといわんばかりに、ほんの少し腰を折る。
あたしは、フンとそっぽを向いた。
「夜に電話したのに、隼人ったら出てくれなかった!」
「バカか? 4時4分に鳴らす奴が、どこにいるんだよ!」
「ここにいるじゃん!」
「普通の神経してたら、あの時間は寝てるだろ!」
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