§第1章

4/5
前へ
/17ページ
次へ
あたし、秋月美咲、17歳。 都内の私立高校に通う、高校2年生。 襟元のリボンを蝶々に結び、真っ青なブレザーに袖を通す。 翌朝、家を出ると、朝から真っ暗な雲が一面を覆っていた。 今にも泣き出しそうな空模様。 学校へ着く頃には、大粒の雨が滝のような激しさで降り出した。 傘をさしていたにも関わらず、体はびしょ濡れだ。 「おい、美咲、タオル持ってないか?」 下駄箱で後ろから声をかけられ、あたしは振り返った。 やや筋肉質な体に、少し濃い目の顔。 天然のパーマか、寝癖かわからない茶褐色の髪。 見慣れた顔が、目に映ってくる。 「おい、美咲ったら」 あたしより、頭ひとつぶん高い、171センチ。 隼人だ。 あたしは、無言でバッグからタオルを取り出して、隼人に放つ。 「あれ? 挨拶なし? しかも、拭いてくれないわけ?」 隼人が拭いてくれといわんばかりに、ほんの少し腰を折る。 あたしは、フンとそっぽを向いた。 「夜に電話したのに、隼人ったら出てくれなかった!」 「バカか? 4時4分に鳴らす奴が、どこにいるんだよ!」 「ここにいるじゃん!」 「普通の神経してたら、あの時間は寝てるだろ!」
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加