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あたしは、涙目になった。
今朝、隼人の顔を見たら、「夜に悪夢を見たの」不安な気持ちをすべてぶつけて、隼人に甘えようと思っていた。
それなのに、顔を見たとたん、隼人を責めてしまう。
あたしったら、いつもこうだ。
「だいたい普通の神経してたら、傘くらい持ってこない?」
「朝は、まだ降っていなかったぞ」
「ウソ、小雨ぐらいは、降っていたでしょ?」
「……おまえって、大バカ」
「さっきはバカで、今度は大バカ? 失礼しちゃう!」
「オレが傘、持ってきたら、帰り、美咲の傘に入れてもらえねぇし」
隼人は、ずるい。
そんなふうに言われると、もう責められない。
いつだって隼人を許してしまう。
クラスは違っても、隼人は、毎朝、必ずあたしのクラスに遊びに来てくれる。
帰りは、いつも廊下であたしを待ってくれている。
そんな隼人のこと、どうしてきらいになれようか。
「ってか、美咲。おまえ、寝相わるいんじゃねぇ?」
「なによー」
「だって、おまえの首に、なんか〝跡〟がついてるぞ」
なにかが食いこんだような、うっすらと浮き彫りになる赤い線。
起きても覚めない悪夢のつづきが、今からはじまるなんて。
あたしは、このとき、知る由もなかった。
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