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白い息を吐きながら車を降りると視界の隅に何やら険悪なムードのカップルが目に入った
女は捕まれた腕をふりほどき怒鳴っているようだ
『乗れよ!置いてくぞ!』
男の声を無視しながら女が俺の前を女子トイレに走り込む
2人のやり取りを尻目に軽食コーナーに行き、注文した決して美味いとは言えない麺をすする
半分を食べた頃、壁に向かって麺をすする俺の一つ隣にさっきの女が座った
鼻水をすすりあげながら麺を口に運ぶ俺の横顔に女の視線が向いている
『あの… 』
その声に麺を口に運んだまま箸を止めて向き、麺を咀嚼しながら聞き返す
『ん?』
麺を飲み込む俺に構わず女が問う
『どこまで行くの?あのオープンカーでしょ?』
女の問いかけに飲み込んだ麺を胃に押し込むように水を飲んだ
『あぁそうだ。彼氏とケンカか?』
『見てたの?彼氏じゃないし…。ヤリたいだけの男。』
『ふーん…』
『ね、どこまで行くの?東京まで乗せてってくれない?』
『他を探したらどうだ?俺はタクシーじゃない。』
『そんなのわかってるし』
『アレなんかどうだ?喜んで載せて貰えるぞ。それにそんな短いスカートじゃ寒くて30分と乗ってられない』
そう言ってパーキングエリアに停まっている長距離トラックの群れを顎で指す
『格好悪いから嫌。寒くてもオジサンのオープンカーがいい』
歳は24、25くらいの女はリサと名乗った
『オジサンさんねぇ…』
確かにこのくらいの小娘からすれば自分では若いつもりでもオジサンなのだろう。
『あ、オジサンさんは失礼だった?』
リサはにこやかに皮肉った
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