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小百合ちゃんは陽介くんより年上なのに、どこかあどけなさの残るお姉さんだった。
「お姉ちゃん、頭悪いなぁ。ミィにクッキーなんて。そもそも猫は甘味を感じないんだよ。」
陽介くんは、そんなことも知らないの?といった様子で小百合ちゃんに言った。
「うるさいなぁ。余計なお世話よ。」
小百合ちゃんはポケットからキャンディを取り出して口に含む。
「小百合、またお菓子?甘いものばっか食べてると虫歯になるわよ。」
「いいじゃん。クリスマスなんだからお菓子ぐらい。」
「いつも食べてるじゃないの。それより、早く着替えてきなさい。食事ができてるわよ。」
「はーい。」
小百合ちゃんは部屋へと続く階段をあがっていく。
やがて、家族4人が食卓に集まった。
これが最後の食事になるんだな。そう思うと、ミィは悲しい気持ちになった。
みんな、今夜のテレビは何を見るかとか、明日はどうするかといった話題で盛り上がっている。
食事が終わると、陽介くんが
「あそぼー!」とミィの尻尾をつかんできた。すべてがあの日と同じだ。その時は遊び相手をするのが嫌で家を抜け出したけど、今日は気がすむまで付き合うよ。
陽介くんの部屋で、ミィはなでくり回されて毛並みが乱れても、ヒゲを引っ張られても、文句を言わなかった。
「ミィ、今だから言えることだけどさ、」
ランドセルをいじりながら陽介くんが話しかけてくる。
「お前が家にきたばかりのころ、餌置き場の餌や水をひっくり返したりして、ゴメンな。」
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