2つのアルバム

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旦那さんが本棚から取り出したのは、1冊のアルバムだった。 「これが、ミィが来る前の家族写真だ。」 旦那さんはアルバムの写真を1ページずつミィに見せる。 「まだ小百合も小学生で、陽介が低学年だった頃のものだ。お正月、夏休み、運動会、クリスマス……イベントがあるたびに写真を撮ったよ。でも、見てごらん。」 旦那さんは数ある写真の中から、どこかに出かけた際に撮ったと思われる写真を見せた。 背景には山が写っている。ハイキングにでも行ったのだろう。 左はしに旦那さん、右はしに奥さんがいて、それに挟まれる形で小百合ちゃんと陽介くんが笑顔でピースサインをしている。 「分かるだろ?父さんと母さんは離れて写っているんだ。ほかの写真もみんなこうだ。小百合も陽介も、父さんと母さんの関係を敏感にキャッチしてたみたいでな。写真を撮る時は、率先して真ん中に入っていたよ。」 写真の中で、旦那さんと奥さんは笑っている。幸せそうに見えるけど、心の中は不安でいっぱい…そんなの、悲しすぎるよ。 「母さんに別居を切り出そうか迷っていたまさにその時、小百合がミィを拾ってきたんだ。」 旦那さんは、複雑な思い出が詰まったアルバムを本棚に戻す。
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