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「最初はもちろん驚いたさ。よりによってこんな時にって。」
旦那さんはミィの頭をなでながら語りかける。
「でも、お前と過ごすうちに、私と母さんに笑顔が増えた。見せかけの笑顔じゃなくて、心からの笑顔だ。小百合や陽介も、ずっと生き生きしていたよ。」
よかった。僕が来たことでみんなが幸せになったなら、僕も嬉しい。
旦那さんは、今度は引きだしの中からコンパクトサイズの写真ケースを取り出した。
「これは、お前がきたあとの写真。ミィはまだ小さいな。」
ミィだけが写っている写真、小百合ちゃんと写っている写真などたくさんの写真があったが、その中から旦那さんは一枚の写真を抜き出す。
家の前に並び、家族全員で撮った集合写真だった。
旦那さんと奥さんが寄り添って、旦那さんの手は陽介くんの肩に置かれている。小百合ちゃんは腕にミィを抱えて上機嫌だ。
さきほどの形だけの家族写真とは違う。みんな、輝いていた。
「父さんはこの写真を焼き増しして、いつも手帳に入れてるんだぞ。ほら。」
そう言って、旦那さんは机に置いてある手帳を開いて見せた。
手帳についた写真ケースに、集合写真が入っている。
旦那さんは携帯電話の待ち受け画面も見せてくれた。
小百合ちゃんとミィが写っている。ほかにも写真が保存されていると旦那さんは言った。
この家に来て、本当によかった。ミィは心からそう思った。
「おっと、読書の途中だった。話につき合わせちゃったな。」
旦那さんはミィを抱えて床におろす。
眼鏡をかけて読書に戻った旦那さんを見ながら、ミィは部屋を出た。
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