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部屋を出ると、小百合ちゃんの部屋の中から音楽が聞こえてきた。
陽介くんの部屋をのぞくと、陽介くんは机の上で頬杖をつき、ぼんやりと外の景色を眺めている。
邪魔をしてはいけないと思い、ミィは階段を降りた。
1階の台所では、奥さんが台所で片付けをしている。
「あら、ミィじゃないの。」
台所に入ってきたミィを見て奥さんは作業を止め、ひざをかがめてミィを見た。
「すっかり大きくなったわね。小百合が拾ってきた時は、手の中におさまるほど小さかったのに。」
ミィは顔をあげて奥さんを見た。奥さんはニコニコと笑っている。
「私ね、小百合がミィを拾ってきた時は、ペットなんかとんでもない、しかも汚い野良猫を飼うなんてって、猛反対したのよ。」
拾われた日のことは、小百合ちゃんの顔以外よく覚えていない。しかし、連れていかれた家の中がドタバタしていたことは、うっすらと記憶に残っている。
「今すぐ戻してきなさいって小百合を怒鳴ったわ。でも、あの子がお願い、お願いって大泣きして、最後は私が負けた。」
奥さんは懐かしむように天井を見上げる。
「小百合はとっても優しい子だからね。死んだ子猫のお墓まで作ったんだよ。どうせ世話しきれないと思ったけど、ためた貯金を使っても餌やおもちゃを買う!って。ほんと、いい子だよ。」
奥さんはミィに視線を戻すと、話を続けた。
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