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「あれ以来、大変だったわ。ペットを飼ったことなんかなかったし、餌を買わなくちゃ、猫用トイレを買わなくちゃ、動物病院で予防注射もしなくちゃ…って、そのことで頭が一杯だった。飼育に関する本を買ってきて読んだりしてね…」
奥さんは、僕のことでいろいろ気を使ってくれたんだ。
「ありがとう」の一言を伝えられないのがもどかしい。
「とにかく、私はミィのことで精一杯だったのよ。」
だから、陽介くんはいろいろ意地悪したんだな。お母さんにかまってほしくて……
「まだミィが小さい頃、よく餌置き場の餌や水をひっくり返していたじゃない?」
奥さんが懐かしむような口調で言った。
「週に何回も床が汚れて、このバカ猫!って怒ったわね。家族が留守にしている間に、こっそり捨てに行こうかとまで考えてた。みんなに言ったらどう思われるかしらね。」
奥さんはミィの頭に手をのせる。
「ごめんね、ミィ。あなたからすれば、悲しかったわよね?辛かったわよね?」
お母さんも、陽介くんも、悪くないよ。みんな、それぞれ悩みを持っていたんだ。
「ミィにいいもの見せてあげる。」
奥さんはミィを抱き上げて居間に行くと、テレビの横に置いてあるパソコンの電源を入れた。
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