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奥さんがパソコンを閉じたとき、居間に誰かが入ってきた。小百合ちゃんだ。
「あ、ミィここにいたんだ。おいで!」
小百合ちゃんは、ミィをそっと抱き抱える。
ミィを抱えて2階にあがった小百合ちゃんは、部屋に入るとミィをベットの上に寝かせ、自分も側に寄り添った。
「懐かしいなあ。ミィを連れてきた日も、こうして自分の部屋に入れたっけ。お母さんは猛反発だったけど。」
小百合ちゃんはニコリと笑う。屈託のない笑顔は、まさにこの家を照らす光だ。
「覚えてる?家に来た日のこと。覚えてないか。すごく弱ってたものね。」
小百合ちゃんは、ミィの横に座って回想する。
「あの日は雨が降ってたっけ。傘をさして歩いてたら、かすかに聞こえたんだよね。ミィの鳴き声。」
兄弟を亡くして、ただ悲しくて鳴いていた。その声が、小百合ちゃんに届いた…
「最初は空耳かなと思ったんだけど、それから声がする方向をたどって、やっと見つけたんだ。草むらの中に捨てられたダンボール。」
ミィは、自分を捨てた人物の顔を覚えていない。ただ、生きることに必死だった。
「ひどいよね。人目につかない場所に捨てるなんて。」
小百合ちゃんは憤りを隠せない様子だ。優しくて、純粋で、正義感が強く、まっすぐな子。それが小百合ちゃんだ。
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