小百合の思い出

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「ミィだけが生き残って、ほかの子は死んでた…」 小百合ちゃんの声は震えている。 悲しまないで。これは小百合ちゃんのせいじゃないんだから。 「ミィだけでも助けたい。そう思った。だから連れてきたの。濡れた体をふいて、タオルで包んで温めて、病院に連れていって…」 ミィは何も覚えていない。今思えば、死んでもおかしくない状態だったのかもしれない。 「お母さんに反対されたけど、何とか飼うのを許してもらった。お父さんが言ってたんだ。もしかしたら、ミィは幸せを運ぶために小百合に拾われたのかもしれない、って。」 旦那さんがそんなことを?もしかしたら、冷えこんだ家庭に明るさを取り戻したいという願いを、僕に込めたのかもしれない。 「不思議だよね。お父さん動物が好きってわけでもないのに。でも、お父さんが言った通り、ミィのおかげでみんなが幸せになったんだよ。」 小百合ちゃんはミィを抱いて背中をなでる。小百合ちゃんのぬくもりが伝わってきた。 「ミィミィってよく鳴いてたから、いつの間にかミィっていう名前になったけど、今じゃすっかり静かになったね。」 ミィは試しに鳴いてみるものの、ニャーンという声が出るだけで、子猫のときのミィという声は、もう出なかった。
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