小百合の思い出

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「ミィって面白い猫だよね。人の言葉が分かってるみたい。」 僕の言葉は小百合ちゃんには分からないけど、今、僕は人間の言葉が分かるんだよ。 「そうだ、今日はミィに、私たちからのクリスマスプレゼントがあるんだ。えーと、音楽音楽……」 小百合ちゃんがステレオのスイッチを入れると、ベルの音が心地よい軽快な音楽が流れてきた。 プレゼント?くりすますっていうのは、誰かに贈り物をする日なのかなぁ? 「メリー・クリスマス!!私たちみんなで作った、世界で一つのプレゼントだよ。」 小百合ちゃんが掛け布団の下から取り出したのは、革製の赤い首輪だった。小さな可愛らしい鈴がついている。 「お父さんが材料を買ってきて、お母さんがスナップをつけて、私が色を塗ったの。鈴をつけたのは陽介だよ。」 小百合ちゃんは首輪をミィの首に巻き、スナップを止める。 「気に入ってくれた?」 家族みんなが、心を込めて作った首輪… クロは嬉しさのあまり、小百合ちゃんの部屋中を駆け回る。 チリン、チリンという鈴の音が、ステレオから流れてくる音楽と交わって不思議なメロディを奏でていた。
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