ひとりぼっちのクリスマス

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煙が見えたと思ったら、あっという間に火が出て、家は炎に包まれた。トラ猫はそう説明したが、家族が火災に巻き込まれたことをクロは信じなかった。自分の目で確かめていないから。 「まあ、そう落ち込むなよ。猫は一匹でも生きていけるんだぜ。なんなら、俺が率いる野良猫グループの仲間にしてやるよ。」 クロはトラ猫の言葉など耳に入らなかった。ほんの少し前まで、家族は生きていた。それがもういないなんて、考えられない。 「…家族は死んでない。みんな生きてる。」 クロはかたくなに主張した。 「おい、まだそんなこと言ってるのかよ。いい加減現実を受け入れろって。」 「うるさい!」 クロは叫ぶと、その場から走り去った。 近所の公園に行くと、植え込みの影に身を潜めた。冬の冷たい風が体に当たる。 外で寝るのはあの時以来だ。まだ子猫だった頃、粗末なダンボールに入れられ、2匹の兄弟と一夜を過ごしたあの夜… 夜が明けると、ほかの兄弟は力尽きて死んでいた。悲しくて鳴いているところを、当時小学生だった小百合ちゃんが拾ってくれたのだ。 ダンボールの中で過ごした一夜の記憶をかみしめながら、クロはクリスマスの夜を公園の片隅で過ごした。
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