家族の面影

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クリスマスの朝、クロは小鳥の鳴き声で目を覚ました。 もう朝か…… また、あの日の夢を見てしまった。これで何回目になるだろう。早いものだ。あの日から、もう一年経つのだな…… クロは大きく伸びをして、空き地をぐるりと一周した。 「おい、あいつまだここに居座ってるぜ。」 「よく続くもんだな。」 塀の上から、野良猫たちがクロを見下ろしながらからかった。最近は野良猫に限らず、近所の飼い猫や犬、あげくにハトやカラスまでがクロをバカにする。 でも、クロはそんな嘲笑は耳にもとめず、空き地にとどまり続けた。もうすぐ、家族はここに戻ってくる。そして、新しく家を建てて、元の生活に戻るんだ。空き地になったままなのだから、この土地はまだ家族のものだ。きっと帰ってくる。 その希望だけがクロの励みだった。 毛繕いをしていると、クロの鼻に何か冷たいものが当たった。雨粒だ。 もうすぐ雨が降る。ただでさえ水が苦手なうえ、家がないクロにとって雨は大敵だった。 急いで空き地のわきに捨てられた古い冷蔵庫へと避難する。 家が取り壊されて以来、この空き地は家具や電化製品の不法投棄が絶えない。 しかし、それらは雨から逃れたり、身を隠すのに最適だったので、クロには好都合だった。古い冷蔵庫の中で、クロは雨がやむのをただじっと待っていた。
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