家族の面影

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クロは女性の言っていることが理解できなかった。何より、女性に猫の言葉が通じているのが驚きだった。 「私の名前はモール。人間は私たちのことを死神と呼ぶわ。」 「しにがみ…?」 「そう。死ぬ人間を迎えにくるのが私たちの仕事なの。人間は私たちに怖いイメージをもってるみたいだけど、天使の仲間なのよ。死をつかさどる天使。」 そう言って、モールは再び空き地を見つめた。 「小百合ちゃんたちは…死んだのですか?」 クロは動揺を隠せない。 「ええ。ここに住んでいた家族は、私が担当していたの。皆亡くなったわ。ストーブから火が出たみたい。」 「そんな…僕を置いていっちゃうなんて…ずっと一緒だと思ってたのに……」 「生き物はいずれ死ぬわ。人間も、犬も、猫も同じ。あなたも、残された時間を自分のために使いなさい。」 モールの口調は冷静だったが、クロはその声に小百合ちゃんに似た温かさを感じた。 「私が今日ここに来たのはね、亡くなった家族の思いが、この空き地に残されているからなの。」 「家族の思い?」 「そう。死んだ人間に強い心残りがあるとね、死んだ場所にその人間の思いが残るのよ。私たちは意識と呼ぶけど、人間はそれを幽霊と呼ぶ。感覚の鋭い人間には、意識が見えたり、声が聞こえたりするわ。」 そう言って、モールは空き地の中央に向かって歩いていく。
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