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だから、もっと長いあいだ上様が気づかず、あたしを御寝所に呼ぶのがあと1日でも遅れたら、あたしたちは一生…というか、もう時空の果てでも会うことはできなかったはず。
そんなあたしの想いなんて全然わかんない上様は大きなため息をついて、
「あのようなことを考え出すのは、大奥じゅう探したって、お蘭、そなたしかおらぬ。よりによって、御台を変装させるなど…」
と、あきれたように言う。
「じゃあ、あたしが上様に『御台さまに会ってあげて』って言ったら、その通りにしましたか?」
「そ、それは」
「しなかったでしょ? 『なにゆえ、今さら御台に会わねばならぬ』とかなんとか言っちゃって」
「うーむ」
あたしにやりこめられて返事に詰まる上様は、こう言っちゃ失礼かもしれないけど、かわいい。
ま、それだけびっくりしたってことでしょうけどね。
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