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「ねぇ、上様。御台さまのお気持ち、わかったでしょ? 孝子さまは初めて会ったときから、上様のことをお好きだったの。でも、お姫さまだからそんな気持ちをうまくあらわすことができなかったの」
「わしだって、都から嫁いできた姫を見たとき、あまりの美しさ、雅さに目を見張ったものじゃ」
「だったら、そう言ってあげればよかったのに。京都の言葉を笑ったりせずに」
「あれは…」
「孝子さまがキレイだったから、恥ずかしかったんでしょ。お公家さんのお嬢さんだから、江戸の女の子とずいぶん雰囲気が違うし」
「そうじゃな」
「それに『お膳立てされた結婚なんて!』っていう反抗心もあった。だから、わざと素っ気なくして、女装したり、御小姓をはべらしたりしたんでしょ?」
「…どうして蘭はわしの心の内がわかるのじゃ?」
「わかりますよ。だって、上様ってわかりやすいもん。それに…」
「それに?」
うっ、と言葉に詰まる。
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